条件に合った顕微鏡は見つかった。
必ず落札するという気持ちで、終了時間にはディスプレーの前にいた。
終了10分前になると、入札が相次ぐ。4〜5000円代だった入札価格が10分前には1万円の大台を超えた。
5分前に入札を始める。しかし、結果をいえば、競り負けた。
ライバルはどんなやつかと思って見てみると、とにかく顕微鏡ばかりを落札している。おまけにプロフィールを見てみると、「顕微鏡大好き男」とあった。カメラもいっぱい落札している。きっとお金には困っていない御仁なのだろう。ほしいとなったら意地でも落札しそうな気迫が、その履歴から伺うことができた。
そうかぁ、仕方ないなぁ。
数日後に終了するつぎなるターゲットに変更。
また、ディスプレーの前に座る。
すると。
また、「大好き男」氏が現れた。
競り合う。しかし、今回は、少し展開が変わっていた。前回のような気迫が伝わって来ない。IDで、前回張り合ったやつとわかったのだろう。譲ってくれそうな感触が伝わってきた。終了1分前。
やれやれと思った瞬間、突然、オークションは終了した。じつをいえば、ギリギリに入札した第三者にしてやられたのだった。トンビに油揚とはまさにこのこと。迂闊だった。
再び、ターゲットを数日後終了のアイテムに変更。
またしても、ディスプレーの前にぼくはいた。
そして、またしても、「大好き」氏が現れた。
「こっちは必要に迫られているんだから。あなたは、顕微鏡、いっぱい持ってるじゃないですか」。心のなかで、つぶやいた。
はたして、氏はどんな対応をするのだろうか? また、最初の時と同じように競り合ってくるのだろうか。入札金額では、負けることははっきりしている。さて、どうするか。
不安な気持ちで入札したのだが、氏の入札がパタリと止んだ。
「ああ、譲ってくれるんだ。私の気持ちは通じたらしい」
結局、CL型より高い値段で購入したのが、下の写真のオンボロ顕微鏡である。
(4に続く)
↓仕方なく落札した古いニコンの顕微鏡。某大学の生物学研究室で使われていたという代物。薬品の匂いがしみ込んでいた。(一部パーツは、CL型のほうに移植済み)
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