ピアノを習うことは終わっても、バッハを弾きたいという気持ちに変わることはなかった。
弾くのだったら、シンプルな小曲では飽き足らない。ピアノを始める時の目標であった「インベンションが弾きたい」という初志を独学で貫くことにした。
目標はインベンションの第一番ハ長調。
実力さえあればむずかしい曲ではない。しかし、子ども時代に教育を受けず、大人になってから始めた身としては、難曲である。それでもまずは右手だけから始め、つぎは左手というように一歩一歩進めていった。
1曲を、なんとかさらえるようになるまでに、半年はかかったのではないかと思う。
ピアノのバッハへの挑戦は、これで終わった。
実力と感覚に隔たりがあるのは、なんとも哀しいものだ。
ピアノを弾くことをやめてから、もうかれこれ20年。もとのレベルに戻るには、おそらく1年はかかるだろうと思っている。
<続く>
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