所用があって、昨年末に小笠原に行ってきた。海にも行ったのだが、山にも行った。小笠原の独特の植生を見るついでに、ほんのさわり程度だが、きのこもチェックしてきた。
小笠原は海洋島である。東京からは竹芝桟橋から「おがさわら丸」に乗って、25時間半の船旅になる。距離にすると、約1000キロ。一度も陸続きになったことがないという意味で、海洋島と呼ばれる。
植物も生物も、本来は、流れてきた種や、鳥に運ばれたものなどに限られる。海を除いて、その動物相や植物相は独特である。
例えば、この島にはスズメもカラスもトビもいない。この島にいる鳥は26種に限られる。海鳥を除けば、ここで見られる鳥はわかりやすい。小笠原に猛禽がいれば、それはオガサワラノスリで間違いない。ノスリの亜種で、本土のノスリよりやや小さい。絶滅危惧種に含まれるが、ここでタカを見れば、オガサワラノスリなのだ。
きのこに関してはどうだったのだろうか?
結論を先に述べれば、じつに奇妙だった。
入手したデータによれば、小笠原でこれまで見られたきのこは約260種。そのなかまで、土から出る代表的なものは、ノウタケ、サンコタケなど。菌根菌としては、リュウキュウマツとリンクした種が主なものということであった。
そして、小笠原で私が見たのは、「本に書いてあるのと同じ」きのこであった!
リュウキュウマツの周辺で見たのは、ハツタケ、チチアワタケ。ちなみに観察したのは、04年のクリスマスであったが、こうした菌根菌が見られるフィールドは多くはないだろう。
あと、目立ったのは、ノウタケ、サンコタケ。
ちゃんと本に書いてあるものが、たまたま行った私にも見られたのだ。
リュウキュウマツの菌根菌は、移植と同時に持ち込まれたものであることがわかる。
数ある地上型の分解菌のなかで、なぜノウタケやサンコタケばかりが発生するのだろうか? 不思議である。
小笠原の印象は、生物多様性という観点でみると、貧しいと思う。なぜか一部の種だけが、さまざまな要因のなかで、繁殖することができているという印象を持った。
それが、菌類にもいえると感じたのだった。
ちなみに、観光資源にもなっている、ヤコウタケは、発光する個体をクリスマス時点で、ちゃんと確認することができた。
上の写真は、小笠原ではよく目立つサンコタケの赤色型。下は、環紋が不明瞭なので、ハツタケでいいと思う。
他に多かったのは、ノウタケ。リュウキュウマツの周辺では、チチアワタケもよく見た。
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