ウェットスーツに着替えて、そろそろと海に入る。ふわりと水面に浮かんでいると体中の力が抜けて行く。水中をのぞけば、里山の海版ともいえる「里海」の風景。荒布、本俵などが茂る海藻の森の中をさまざまな生命が行き来する。動き回る黒鯛、目仁奈。絹針や茶殻といった鯊の仲間は海底から少し離れた所にいつも漂っている。回遊する鰯の仲間は、彼らの機嫌次第だ。大きな岩の陰には、穏やかな性格の奴智鮫が潜んでいる。運が良ければ、水中を舞いながら泳ぐ烏賊の姿も見られる。
水中に立って景色を眺めるのも好きだ。
後ろは切り立った崖。離れ磯には海鴫がやってくる。上空には飛翔する鳶。さまざまな生命が満ちあふれた海から、ふわっと立ち上がって目を上げると、海坂(水平線)が見えてくる。
見るということは、愛すること。
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